上小阿仁裸参り

    上小阿仁村沖田面 裸参り
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二月。一年で最も寒いこの季節に、月明りだけが滲む真夜中の町を、
はちまきにふんどし姿の男たちがわらじを履いてひた走る。
白い息を吐きながら、
凍える身体で一歩一歩向かうのは古くから集落を見守る友倉神社。
人々はなぜこんな真夜中に寒さに耐えながら裸で走るのだろう。

上小阿仁村 沖田面集落に伝わる伝統行事「裸参り」を取材した。

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■五穀豊穣、無病息災願い
路面の雪も幾分溶け、冬も折り返し地点を回ったことに気づく2月21日。

c0214156_23261711.jpg上小阿仁村沖田面(おきたおもて)集落の裸参りは、友倉神社の
年中行事の一つとして、
300年以上の歴史があると
いわれている。



沖田面集落は、
上小阿仁村の中心集落として、360戸およそ700人が暮らしている。
昔は、時間になると家長が一軒一軒それぞれの家で装束に着替え、
0時を合図にその家から神社に向けて走り出すというものだったらしい。

c0214156_2327453.jpg近年では、次第に参加する家の数も人数も減ったため、
地元で旅館を経営する
高橋健生さんが
世話役となって取りまとめ、
みなで一斉に出発するように
なったそうだ。
今年は、小学校2年生から52歳
まで30人余りが参加した。

それでも、禊(みそぎ)をして、五穀豊穣、無病息災、
集落の安全などを祈念する気持ちは、今も変わらず受け継がれている。

■伝統と儀式
ただ裸で走るわけではない。ちゃんとした順序がある。

c0214156_2123910.jpg午後11時30分。
男性はふんどし姿、
女性は長じゅばんという格好で
宿前に整列。




c0214156_21245151.jpgなんと、小3の女の子(写真左)も
参加するというから驚いた。
父親は
「まあ、今しかできない
ことだから。」と承諾したらしい。
「転ばないように頑張ります!」
と勇ましく語ってくれた。

c0214156_2323101.jpg「道彦」と呼ばれる男性の合図で
「エーイ」などと叫びながら
独特のポーズをとる
出発前の儀式が始まった。




c0214156_21262433.jpgそして、「やっ!」だの
「それっ!」だの、
威勢よく水垢離をして
身を清める。
前述の女の子も同じく水をかぶる。

見ているこちらが凍えてきた。

c0214156_21283992.jpg今年は、
上小阿仁村八木沢集落
「地域おこし協力隊」の
桝本さんと水原さんも参加。
桝本さんは、
村に来る前から裸参りを知り、
参加を楽しみにしていたそうだ。

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■名物になるか?!「やまぶん」甘酒無料サービス
c0214156_23194129.jpg高橋旅館の向かいは、
以前ご紹介した
ほうずきカフェの「やまぶん」。
店主の鵜野幸子さんが、
参加者や見物人に向けた
甘酒の無料サービスを
今年から始めた。

c0214156_112169.jpg「“売り”になるまで続けます。」と
いう幸子さん。

来年は、店前をオープンカフェ
にしようと思案中だという。

若者の集う「裸参り」となるか!?

甘酒はほんのり甘くて美味しくて、
わたしもちゃっかりしっかり
ご相伴にあずかり、
身体を温めさせていただいた。


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■人で支える伝統
午前0時をまわった。
濡れた装束を着替え、道彦が「いくぞ~。」と呼びかけると、
みな一斉に神社へ向けて走り出して行った。
街灯の少ない冷え切った夜道を一気に突っ切っていく。

c0214156_21293343.jpg昔は、声を出したり転んだりしたら
初めからやり直しだったそうだ。
「誰が声を出したかなんて、
分からないんじゃないですか?」
と聞くと、
「だから、みんなで押したりして、わざと転ばせたりするんですよ。」と男性が昔を思い出して
少し意地悪そうに笑った。

今よりも人数が多くて活気があったころ。
子どもにとって裸参りは、
いつもは怒られる「夜更かし」を許されて大人の仲間に入れてもらえる、
そんな、ちょっと背伸びをしたわくわくすることだったのかもしれない。

今年の子どもたちの顔を見ていたら、
その気持ちは、今の子も同じなのかもしれないな、とふと思った。

c0214156_23594659.jpg集落を見下ろす丘の上に建つ
友倉神社が、
たいまつの灯りで煌々と光り、
走って来る人を待ち構える。

旅館前を出発してから15分。
一番乗りが辿り着いた。

c0214156_21322996.jpgそして、1人また1人と
鳥居をくぐりやって来る。

みな、息を弾ませ、
身体は寒さで赤くなっている。



c0214156_23333160.jpg神社の中では、
集落の人たちが暖かくして
到着を待ちわびていた。
女性たちは温かいお茶を振舞い、
かつては自身も走ったのであろう
男性たちは、
優しい顔でその労をねぎらう。

c0214156_21332865.jpg米と5円玉が入った御幣は、
落とさないように大事に抱え、
辿りついたら
神社へ奉納するのだという。




c0214156_21344145.jpg階段を駆け上がって来る子どもたちの細い身体が、
寒さで少し引き締まって見えた。
こういう時の子どもの顔には、
無邪気にはしゃぐ笑顔と一緒に
少し大人びた表情が
垣間見えるから不思議だ。

c0214156_21355067.jpg今年厄年だという男性は、
「すっかり厄が落ちました。」と
満足げな表情で答えた。





c0214156_22201399.jpg大館から参加したという
おじいちゃんとお孫さん。
「昔自分で参加して
良かったな~と思ってたんだども、
でも自分はもう年で出れないから、
孫連れてきた。」という。
お孫さんも「いい思い出に
なりました。」と話してくれた。

■受け継がれる伝統
伝統は継ぐ者がいなければ廃れてしまう。形の無いものほど早く。
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しかし、この子どもたちの顔を見ていると、
記憶と絆が拠り所となる「伝統」というみんなの宝物は、
これからも確実にこの地に存在し続け、心をつなぎ、
大切に大切に世代を超えて受け継がれていくのだろうと確信する。

楽しそうな子どもたちの横で祝い酒を囲う大人たちの顔には、
今年もその伝統を守り切り、無事に終えた充足感が満ちていた。

                            県北担当 やっつ
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by akitagt | 2010-03-24 22:26 | 県北情報
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